前編では、DX化するための前提や従来のシステム導入との違い、企業の情報システム部門が抱える課題についてお話してまいりました。
後編は、この課題からさらにDXをひも解いていき、DXを実現するための道筋を考えていきたいと思います。
DXにおける最大の障害は、今まで使っていた情報システム
本来、情報システムを導入する際は、現行業務の流れを明らかにし、その課題を明確にします。そしてその課題を解決するために、業務の慣れややり方の改善を行います。
一連の業務改善の一環として、情報システムの活用を検討するのです。
その際に、業務の当事者たちの発言力が強すぎるとどうなるでしょうか?
皆さん、自分たちの業務に誇りを持たれています。自分たち以上に社内の業務を知っているものなど居ないと思っている方が少なくありません。
その方たちが困っているところ、楽になるところ、それをシステム化するというのが、これまでのシステム開発でした。
予算が十分にあれば、フルカスタムでシステムを一から作るか、予算を削減するためにパッケージを検討するかが、従来の大きな選択肢でした。
この従来通りのやり方でも、それぞれの部門の当座の業務改善という意味では全く問題ありません。
しかしその時々、必要になったシステムをどんどん導入していくことで、各社、多くの情報システムが社内に積み上がっていきました。そしてそれらの情報システム間でうまく連携が取れず、同じ情報を何度も別のシステムに入力するなど、非生産的な業務が生まれていきました。
せっかく、多額の予算と労力をかけながらも、これでは「情報システムを使う」という新しい業務が生まれただけ、などという矛盾まで生じています。
そこで「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という標語が意味を持ってきます。
DXは、全社で抜本的に事業をデジタル化するという発想です。
DXにおける最大の障害は、今まで使っていた情報システムと言っても過言ではありません。
DXを実現するにあたり、留意すべき点は、従来のシステム開発の当事者ではなく、新しい担当者を置くか、貢献のさせ方を変えるべきだということです。
DX戦略に必要な5つのポイント
DXの戦略立案は以下の通り行うべきと考えます。
① 可能な限りトップダウンで行うこと
各部門単独の最適化ではなく、全社の最適化であることを社内に広く理解を得るべきです。
② DX推進の当事者には、経営、業務、システムのプロがそれぞれいること
従来のシステム開発に関わった経験のある人間が必要です。ただし、従来のやり方の問題点を全て理解した人間であるべきです。
③ 現場の意見は事前にヒアリングしてもすべてを鵜呑みにしないこと
実際にお金を稼いでくれている部門に敬意を表しつつ、トップダウンで従わせるのは経営者にしか出来ない仕事です。
④ なるべくシステムを作らない
システム業者は、「人月商売」です。たくさんの工程があったほうが儲かります。しかし、コンピュータが生まれて1世紀、ソフトウェア産業が生まれて半世紀以上経った今、世界のどこかに必ずあなたの会社にあったソフトや機材が必ずあるとお考えください。なるべくそれらを組み合わせてDXを進めましょう。
⑤ いまある情報システムも活用する
いままで使ってきた情報システムを全て廃棄する必要はありません。全社戦略に基づいて、使うシステムと使わないシステムを取捨選択し、使い方や組み合わせを変える努力をしましょう。
どうしても自社にない機能やサービスを必要としたときだけ、新しくシステムを入れたり作ったりするのがいいでしょう。
代表取締役 鈴木将親